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第二章 一人目のシ者?
幸蔵は昼過ぎに目覚めた。
早朝の一二三の来訪にうなされて、なかなか寝付けないでいたからだ。
「お目覚めでしょうか?」
ドアの向こうから、由美子が声を掛ける。
由美子とはもう十年も連れ合っている。
幸蔵と二十離れているから、もう四十になるはずだ。
高級で有名な、新宿のshowpubジャルダンのママである。
「アナタ。私は美容院に出掛けます。夜は店に来られますか?」
「ああ。10時頃には行くよ。」
幸蔵はゆっくりと起き上がり、スリッパを履こうとすると
「オイ。汚ねい足突っ込むな~。」
スリッパがニャリと笑った。
「わっ!ワッ!ワ~!!」
心臓が飛び出しそうになって、胸を思わず抑える。
「そんなに驚くなよ兄弟」
「俺にスリッパの兄弟なんていねえ!」
壁に掛けていたシルクハットが、幸蔵の胸目掛けて飛んで来た。
幸蔵は両手で受けると、ハットの中を見た。
中からヌーと顔が現れた。
「いよ~兄弟。やっと会えたな。」
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