18人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
娘が6歳で死んだ。
ある日突然、
風呂に入れている最中
意識を失った。
直接の死因は
心臓発作なのだが、
持病のない子だったので
病院も不審に思ったらしく、
俺は警察の事情聴取まで受けた。
別れた女房が「彼氏」
同伴でやって来たが、
もはや俺には
その無神経に
腹を立てる気力もなく
機械的に葬式をすませた。
初七日も済んで、
俺は独りで映画を観にいき、
娘が観たがっていた
ゴジラととっとこハム太郎
の二本立てを観ることにした。
とっとこぉはしるよハム太郎♪
の歌を聴いた瞬間、
やっぱり俺は泣いた。6歳にもなって活舌の悪い娘が、
この歌を一生懸命覚えて、
とっとこぉ、はしゆよ、はむたよぉ♪
と歌っていたっけ。
ハム太郎の紙コロジーだって
クリスマスに買ってやる
つもりだった。
女親のいない家庭だったが、
少しでも女の子らしくと、
服を買うときだって、面倒がらずに吟味を重ねた。
学校だって、
行きたいところに
行かせてやるつもりだったし
成人式には、
ちゃんと着物を
着せてやるつもりだった。
女房と離婚してから
俺は100%子供のために
生きることにして、
必死にやってきたのに、
この世に神様なんて
絶対いないんだと知った。
一人になった俺は、
今でもハム太郎を
欠かさず観ている。
30半ばの男が、
ビール飲みながら
アニメを観てる光景は
異様とは思うが、
なんとなく習慣で、
金曜の6時半は必ずTVをつけて
ハム太郎にしている。
もちろん
毎週泣いたりはしてない。
最初のコメントを投稿しよう!