awake

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  思考が一瞬止まった。 世界も止まったと思った。   「顔は別に特別悪い訳じゃねぇのに。デカければいーってもんじゃねぇけど、オトコはやっぱデカい方が好きだし、アンタももうちょっとデカければ‥って、オイ、聞いてんの?」   頭をぶんぶんと何度も横に振る。聞いてない。聞こえない。天使な顔の儚げで綺麗で優しそうな少年がエロくて口悪くて卑劣で下劣で最低な言葉を言って胸について語ってるなんてそんなの全く聞こえない。僕の空耳。絶対ありえない。僕には何も聞こえなかった。   「顔赤いけど。そんなに胸ちっさいって言われんの恥ずかしかっ‥」   「うっさい黙れ変態エロ男!!」   シオンの少年に対するイメージは一気に崩れた。何もかも崩れた。ガラガラガシャガシャボロボロ崩れ去った。ありえない。ありえないマジありえない。何が何百年に一度の珍しい存在だ。ただの変態じゃないか!   「え、マジでそんなちっさいの?Aとか?」   「Aな訳ないだろ!成長したくないし要らないよこんなの!!でも僕だってそれなりに、お前なんかに言われたくないけど、もうちょっとで、し‥し‥‥‥しぃ‥は」   「まだBカップの赤面中なアンタに悪いけどさ、オレのこと、助けてよ。殺される」   「誰がお前なんか‥!!って、‥‥え?」   殺される。 そう言った少年は、一瞬、酷く哀しそうに笑った。
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