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「無駄なことをする。逃げられるとでも思ったのですか」
それには答えず、少年は鼻で笑う。
「テメー自ら捜しに来るなんて、随分長も暇なんだな」
「オマエっ!長に何て口の利き方をっ!!」
腹の出た男が唾を飛ばしながら叫ぶと、長と呼ばれた男は鎮めるように手を軽く挙げた。
「此処で争っても無駄だ。それに捧げの儀までもうあまり時間も無い。早く村に帰らなければ」
「うぅ‥」
小太りな男はまだ何か言いたげに少年をちらちら見遣っていたが、男に睨まれるとビクリと肩を震わせ、急いでポケットから黄色い小さな触媒を取り出し目を閉じる。
「◎≠※♯」
聞き取れない程の小さな声で呟くと、少年と男二人を淡い光が包んだ。
「‥悪ィ、オレのこと忘れてよ。」
光の中が映像のようにぶれ始める。その中で少年は目を伏せた。
「待っ‥」
シオンは手を伸ばす。しかし、掴んだのは光の粒子。
もう三人の姿は何処にも無かった。
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