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ある珍しい雨の日――
とある場所で目を覚めた少年は記憶を失っていました。
ただ一つの記憶に残る言葉を信じて街のある門の下でずっと待っていました……
「――ここで待ってなさい。必ず、必ず迎えにくるから……」
そう言って美しい女性は振り返り、振り返りながら夜の嵐の中に消えていってしまいました……
手には一切れのパン……
たいして美味しくない支給のパンです。
少年は待ち続けました……
珍しい雨の日が何回訪れたでしょうか……
手に握られた一切れのパンはとうにありません……
寒さにも震えながらも待ち続けました。
通りすがる人は相変わらず冷たい目でこちらを見ていました。
まるで捨て犬のように……
それでも待ち続けました。
また人が次第に集まってきました。
少年を見下ろしながら避けるようにヒソヒソと話出した。
「また捨て子かぁ……」
「もうこれで何人目だ?引き取るようなとこはどこにもないぞ」
「可哀想に……きっと親を信じて待っているんだわ……」
「戦時中だからな……子を置いていかなければ生きていけない者も多くいる」
「おい誰かこの薄汚い子供なんとかしろ」
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