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(捨て子?可哀想?薄汚い?
なんで?なんで??ボクは一体なに?)
少年がどこかに捨てた記憶のピースが一つはまった……
(――っ!?いやだ…いやだ!)
「おい!君!」
ある男性が声を掛けようとした時
突然少年は飛び跳ねて一目散に逃げ出しました……
途中途中足を止めようとする声が飛びかう中、少年は走り続けます。
足を止めることができませんでした……
もし、足を止めてしまったら、それは自分が『捨てられた』という事実を認めることになるのだから……
少年は暗い路地裏に着きました。
あまりにも不気味な静けさに思わず足が止まります。
自分という強い感覚が親切にそして暴力的に教えてくれます。
来た道が分かりません……
あの場所に戻れない……
この先も見えない――
ポツリと滴が頬に当たりました。
雷が鳴ります。
雨です。
今年は暖冬でしょうか……
雪が溶けてしまいました……
何回目の珍しい雨でしょう。
そんなことは分かりません。
季節が変わり春、夏、秋が過ぎ、ぐるっと回って雪が降り始めました。
深々と積もる雪はほとんどを真っ白にしました。
今年は暖冬じゃないみたいです。
少年は別の場所であの声の主を待ち続けました。
自分を探しに来てくれると信じて……
――しかし母は来なかった……
雪が積もり、少年も動かないせいか、薄く白くなりました。
皮靴には穴あき、服もところところちぎれ、人々も不気味がって近付こうとしません。
食べ物は、同情で置かれたパン切れや、豚の餌のようなものばかりです。
それでも人々は少年に声を掛けることはありませんでした。
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