はじまり

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俺は今ではすっかり見なくなった蒸気機関車に揺られている。 前の席にいきなり座ってきた乗客が、さっきから馴れ馴れしく話しかけてくる。 「この前、列車に乗っていたら…なんと!顔のない人がいたんだよ!」 「うわ~…怖いな~…」 「それで顔を書いてほしいって言うから、かいてあげたよ…ククク」 「どんな顔?」 「ペナルティーのワッキーにクリソツ(笑)」 「ブッ!」 思わず吹き出してしまった。のっぺらぼうの人…御愁傷様 …ポクポクポクチーン! しばらく話し込んでいたら、窓の端に海が見えて来た。海猫が何羽か飛んでいる海面が碧く光り、太陽光を飲み込んでいる。 「確か君はあそこの村に引っ越すんだよね?」 「あぁ!」 今からワクワクだぜ!あの村で、どんなドキドキが俺を待っているのか… 「良い村だといいな…」 この村が俺の新居のある村…
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