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彩子の長い黒髪が顔を隠し、正面からは完全に見えなくなる。なので傾ける顔の角度は、少しで充分なのだ。
最後の抵抗として、もう一度鉄アレイほど重くなった二重まぶたを、持ち上げる。
三階の教室、その窓からの景色は絶好だ。外にベランダはなく、下を見るとすぐに体育館と校舎に挟まれた通学路がある。
教師の車だろうか、そのボンネットの上に転がる猫が、彩子に負けないあくびをしていた。
と、突然その猫が何かに驚き、逃げ出す。
猫ほどではないが、彩子は少しだけ眠気が薄れた。
彩子の大きく、鋭い目が二、三瞬(まばた)く。
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