10人が本棚に入れています
本棚に追加
彩子は手鏡を取り出し、太陽光を反射させる。そして鏡の前で手を上下に動かし、体育館の影に反射した光を点滅させた。
彩子なりの敬意の表れ。拍手だ。
だが、彩子の光に気が付いた「誰か」は、昨日と同じように、また謎の動きを繰りかえし始めた。
何かの文字のようだ。だが光は途切れないので、どこからどこまでが文字なのかわからない。
何? 何を伝えたいの? 誰がやってるの?
好奇心の大津波に、彩子はいとも簡単に飲み込まれた。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。まだ教師が何か話していたが、彩子は構わず号令をかけた。
クラスメートと先生が戸惑う中、彩子は一人教室を飛び出す。
教室を一つ一つ見てまわっては時間がない。上履きのまま校舎の外に出ると、先ほどまで誰かの光が当たっていた場所へ向かう。照らされた校長はもういなかった。
そして、あの光ももうそこにはない。
彩子は校舎を見上げ、目だけを動かして教室を見やる。が、光の「誰か」は見つけられない。
……。
最初のコメントを投稿しよう!