10人が本棚に入れています
本棚に追加
結局何もわからず、彩子は光の動いていた壁の方を見る。
「誰か」の光の動き……。
それをもう一度思い出し、考える。
おそらく三つの文字。数字? 自分の手を動かして思い出した光をなぞる。
8……0、8。808?
どういう意味の数字だろう。八百屋? キュウリ……。河童?
いやいや……。彩子は頭を振って、妄想を消す。
何だろう……。教室に戻ると、すでに六時間目の授業が始まっていた。
生徒と教師の視線が集まるが、まるで見えていない。
「おい! 橘!」
教師の呼びかけから数十秒してから、ようやく彩子は
「はい?」
答えた。
間の抜けた声に、教室から笑いがこぼれる。
教師はため息をついて、授業に戻った。
彩子は授業中ずっと窓の外を眺めながら、謎の文字、808について考えていた。
開いたノートにも、板書されたものではなく、808の文字が書き連ねられている。
彩子が思考を巡らせる時、体は一切の動きを止める。体を動かす全ての力を、脳髄に注ぎこんだかのように。しかし、手だけは操られたかのように動いていた。
わからない。
最初のコメントを投稿しよう!