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…目が覚めて真っ先に見えたのは青い空だった。
どうやら何時の間にか眠りに堕ちたらしい。
久しぶりに野宿をしたのだけれど、やはり昔馴染んだ地の匂いは懐かしいものがある。
『うふふ、本当に、懐かしい。』
背中の汚れを払いながら辺りを見回す。
傍らには使い慣れた双振りの模造刀。
目の前に広がるのは、一体いつの時代に紛れ込んだのだと言いたくなるような造りの屋敷。
あれこそが、今回の目的地。
『変わって、無いのだね。あれから数年経ったのだけれど。』
その如何にも古めかしい造りの屋敷は、愚識の実家…否。自らの愚行にて既に他人の家となっている。
忌々しい、象徴。あれが全てを諦めなければならない道を進む足掛かりになったのだ。
だから、消す。
簡単な答えだなと苦笑してしまう。
『さてと…どうやら久々にこの刀を振るう事になるわけですからね、少しは慣らさないとね…』
僕は元々1つしか刀を持たないはずだった。
それだけど、ある時双識兄さんが僕に言ったのだ。
『愚識、その刀は模造刀なのだろう?ならばただ斬るだけでは駄目なわけだから自然と全力で叩き斬るわけだね、うん。』
最初、僕は双識兄さんが何を言いたいのか判らなかった。
『確かにそうですね。僕としては豪快に叩き斬るのが好きなわけですから…別に不便ではないですけど…。』
『うふふ、それはそうだろうね、うん。だけどそれは君がまだ殺し名相手にまともな戦闘をしたことが無いから不便とは思わないわけだよ。例えば愚識、君はもし全力を乗せた攻撃を回避されたらどうする?』
『大きな隙が出来ますから…多分、次の行動に移るのが遅れるわけですから何も出来ないでしょうね。』
『そうなのだよ、だからこそ一本ではよくないのだよ。だから二本持ちたまえ。』
『…?』
そう言って双識兄さんは、大鋏のボルトを抜いて双振りの剣に見立てた。
『いいかい?双振りにしたら、片手で持つのだよ。利き手に長い方、片方には少し短めのをね。そして、利き手で全力で振り下ろした後に、避けられたら反対で斬り上げる。それが基本の動きだよ。』
…双識兄さん、貴方の教えは今までとても役に立ちましたよ。
そして今回も、それは役に立つでしょう。
『さて、それでは…さくっと零崎でも始めてみよう』
双振りの刃が、鞘から引き抜かれた。
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