第二章 彼の歌

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しばらくたって、その囀りに混じって何かが耳に飛び込んでくるのを感じた。 天は慌てて立ち上がった。 周りを見渡し、そしてもう一度よく耳を澄ます。 それはまるで、人の歌声のようだった。 これが噂の、と天は半ば息をするのも忘れていた。 これが噂の根拠だった。 近所のたくさんの人間がこの歌を聴いて、妖精だの幽霊だの言っていたのである。 まるで誰かを呼び寄せているかのように、甘く、やさしげな声だった。 もしこれを歌うのが仮に妖怪なのだとしたら、……自分たちはあまりに汚すぎる。 天はほとんど無意識に、その声を求めて森中をさまよっていた。 今まで噂を聞いても、その正体をつきとめようなどと思ったこともなかったし、馬鹿馬鹿しいとさえ思っていたこともあった。 それでも、どうしてもその声に近づこうとする、自分の中の何かに抵抗することが出来なかった。 そして自分にとってそれが何を意味するのか、自分がいったい何を求めていたのか、それが自分にとってプラスになるのか結局わからないまま、天はそこに辿り着いてしまっていた。
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