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天はとりあえず口を開いた。
「さっき」
「ん?」
「歌ってたの?」
ああ、と少女は明るく顔を上げた。
「テルミンね」
「テルミン?」
「あれだよ、あの音だったんだ」
彼女はすぐ近くの木箱を指差した。
天は少女に連れられて一緒にその箱を覗き込んだ。
「さっきから気になってたんだけどさ、これ……何?」
「楽器だよ。電子楽器」
心なしか彼女は興奮していた。
「こっちの垂直なアンテナで音程を、でこっちの水平になってるアンテナで音量を変えられるの」
少女は勝手に説明を始めた。
「二つの高周波発信器の働きで音を鳴らすんだよ。あ、それは別に二本のアンテナのことじゃなくって、一本のアンテナに対して、もう一つ同じものがこの木の箱の中にあるってことね」
「じゃあ、テルミンの中には全部で四つ、その……コウシュウハハッシンキがあるわけだ」
天はわからないままになるのが嫌だったので、念のために聞いただけだったのだが、彼女はそれを勝手に“興味をもってくれた”と解釈してしまったようだ。彼女はやたら嬉しそうに説明を続けた。
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