第三章 出会いの歌

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「そゆこと。で、その“木の箱の中にある高周波発信器”のほうは、ずーっとね、周波数が一定になるようになってるの。でもアンテナのほうは」 彼女は実演まで取り入れて説明してくれた。自分のかわりに学校の総合の時間の発表をしてほしくなった。 「こんなふうに、アンテナから手を遠ざけたり近づけたりして、周波数を変化させることが出来るようになってるんだ。そうすると……」 「二つの周波数には差が出来ることになる」 突然天が口を出して、彼女はまた驚いた。 「もしかして、知ってた?」 「なんとなくそう言いそうだった」 彼女はふふ、と笑った。 「キミ、頭いいでしょ」 「うん」と天は言った。「続けて」 「その差から、低周波振動っていうのが生まれる。……うなり、とかブザー、とか言うらしいけど、とにかくこれを増幅したり、補正したりとかして、人が聴きとれるような音……なんだっけ、可聴……可聴……」 「可聴周波数」 「それ!その可聴周波数に直すのが、スピーカーね。あたしのやつは充電式になってるからこうやって外でも弾ける」 「なるほど」 「うん」 満足げににっこり笑って彼女は言った。
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