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鳥の囀りが大きくなった。
二人の間に再び静かな空気が漂った。
ややあって彼女は何か思い当たったようにぱっと顔を上げた。
「……何?」
怪訝な目をして天は尋ねた。
それを横目で見やりながら、彼女は口元に人差し指を当て、もう反対側の手を空に捧げるようにかざす。
「おいで」
彼女の視線を追って、天は森の木々を見渡した。
その隙間から、名も知らない一羽の小鳥がちょうど彼女の人差し指の先を目がけて飛んでくる……。
「……君は……」
すっかり夢中になって天は彼女をじっと見た。
……彼女は完全に自然の一部になっていた。
「……自然の側のものと……話が出来るんだ」
「笑っていいよ」悲しく笑って彼女は小鳥を放した。「馬鹿みたいだって」
「今僕は目の前でその光景を見たんだ」天は言った。「疑うということのほうがどうかしてる」
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