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彼女はしばらくぽかんと天の顔を見ていた。
天はそれを照れくさく思ったように、背を向けて海に向かって歩き出した。
彼女の目にかすかに希望の光が映った。
しかし、すぐにうつむいて目を伏せてしまう。
「……笑わ……ないの?」
「笑わない」
「気味悪くないの?」
「そんなんで気味悪がってても仕方ない」
「……馬鹿だって、……こんな馬鹿世界中探したっていないって……思わないの?」
天は振り返り、そして軽く笑った。
「……それは言えてるかもね」
天は再び海に歩いていった。
「ほら、弾いてくれよ。例の……テルミン」
青い空と、青い海の間の世界で、たったひとつの、歌が生まれる。
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