第四章 恐れの歌

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「天!こっちきて!」 「え」 ゆきると名乗った少女は勝手に駆け出した。 まさか無視して引き返すことは出来ないので、天は仕方なくそのあとをついて行くしかなかった。 なぜなのか自分でもよくわからないが、昨日天は、出会った少女がどんな風に生活しているのか、ものすごく気になった。 金も得ずにどうやって衣食住してるのか、本当に百パーセント自然の中で生きてるのか、どうしてそうなってしまったのか。 どうでもいいと思いつつ、下校途中、森の前で五分くらい立ち止まってしまっていることに気づき、苦笑しながら森へ足を向け、二日連続でこのよくわからない少女を訪ねることとなってしまった。 ゆきるの走り方は危なっかしかった。 今にもバランスを崩して転んでしまいそうに見えて、天は心底はらはらしてその小さな肩を追いかけた。 壊れ物のように見えるのは、もしかしたら、昨日、一瞬彼女のことを妖精と見間違えたせいかもしれない。 「見て」 ゆきるは叫ぶように言った。
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