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森、だった。
見上げれば、目の回りそうなくらいに高く伸びる木々が、果てることの無い空にどこまでも吸い込まれてゆくように思えた。
淡い日の光は木々の間から差し込んで、いくつもの光の柱となって草原に突き刺さっている。
一枚一枚の葉は一年のうちで一番濃く、そして一番美しく茂ったことを誇り、太陽の光を借りて光っていて。
彼は、そこに立っていた。
木々の続く道を抜け、ふと足を止めたその場所は、急に“何も無い”空間に変わった。
まるで巨大な怪物の爪に抉られたかのように、そこだけは木々がぽっかりと絶えている。
地上にはただ広いだけの草原、その奥にはただ青いだけの海が、ずっと青く、他のどんな青よりも青く、続いていた。
そして、彼女はそこにいた。
空と海の間の世界に、彼らは存在していたのだ。
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