第四章 恐れの歌

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大きな滝を眺めていると、その間にゆきるはさっさと川のほうへ歩いていってしまった。 そのまま、ざぶざぶと水の中に足を突っ込む。 「……ん……気持ちいい温度みたい」 ゆきるは流れる川水にそっと頬をつけた。 一瞬の、軽く目を閉じた微笑みが、やたら美しかった。 黙って見ている天を気にせず、ゆきるは近くの木々から赤くつるりとした木の実をふたつもいだ。 それからまるでアライグマみたいに文字通り果実を川の水で洗った。 「はい」 小走りに駆けてきたゆきるは、そのうちのひとつを、ちょうど久しぶりに訪ねてきた友人をもてなすかのように差し出した。 「ありがとう」 天は久しぶりに訪ねた友人からお茶を出されたみたいにそれを受け取ってみた。 赤い木の実は、日の光が当たって透けているようだった。 一瞬それを食べることに躊躇したのだが、目の前でゆきるがあまりにも豪快にかぶりついたので、胃には悪くないだろうとかよくわからない理由をつけて、ねずみのようにちまちまと木の実をかじった。
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