第五章 仲直りの歌

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うっすらと、朝の淋しい風が頬をなでていた。 ゆきるは身を起こした。 滝の音が遠くに響いている。 空には梅雨が開けたばかりの雲ひとつない青空が広がっていた。 ひとしきり空を仰いで、やっとゆきるはうしろの物音に気づいて振り返った。 「……おはよう」 決まり悪そうに、小さな額に軽く皺を寄せて、その少年は呟くように言った。 「おはよう」ゆきるもそう答えて立ち上がる。「ちょっとびっくりした」 「もっとびっくりするかと思った」 天は微笑して言った。 ゆきるは首を傾ける。 「どしたの?今日は昨日と違う時間じゃん」 「今日は学校休みだから」 「あ、学校ね」 ゆきるは話題を避けようと目線を逸らした。 天はそれを察したらしい。 向き合うのをやめて大木の窪みに腰を下ろした。 「……ごめん」 唐突に、天は呟いた。 「え?」 「昨日は、ごめん。……それを言いに来たんだ」 童顔の横顔に苦しげな表情が浮かんでいた。 「ホントは……君の生き方を否定するつもりはなかったんだ。……だから、ごめん」 天はちらりとこちらを見た。 その不器用で馬鹿みたいに正直な目が、意味もなく可愛くて仕方がなかった。
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