第五章 仲直りの歌

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「これが、林檎」 天はそんなゆきるの様子に気づかないふりをして次々と袋の中のものを取り出した。 「バラ科の落葉高木で、北半球温帯や冷帯……まあ寒い地方で採れる果物なんだ。」 「はぁ……」 「今の季節から秋にかけて採れる。いろんな種類や名前がある」 「へぇ……」 ゆきるは近くに転がった、とてつもなく大きな果物に目が釘付けになった。 「ね……あれは?」 「ん?」 天は、ああ、と軽く笑って答えた。「西瓜ね」 「す……すいか……?」 「食べてみる?」 横目で笑いかけると、ゆきるは遠慮しがちに、それでも好奇に満ちた目で、こくんと頷いた。 天はナイフを取り出して、ゆきるの目の前でその大きな厚い皮に切り込みを入れる。 「これでも野菜の一種なんだぞって父親に言われた時、どうしても納得できなかったんだ」 「え、これお野菜なの?」 「びっくりするだろ?果物は多年草で何度も実をつけられるけど、野菜は一年草だから、一度実をつけるとそこで一生が終わってしまうんだ。つまりイチゴも野菜だってこと」 天は全体重をかけて西瓜と格闘していた。 「子供のころは、甘いのが果物で苦いのが野菜だって勝手に決めてた」 くすくすとゆきるは笑った。「あたしも」
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