第一章 始まりの歌

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「……ねえ」彼女が黒い目を上げた。「話して、いい?」 砂虎はその目を見返して、とぼけて笑ってみた。 「何をだよ」 少女もそれにあわせて小さく微笑んだ。 「彼のこと。ぜんぶ」 砂虎はため息をついた。 「そんで、おれはそのあとどうしたらいいんだ?」 「いいの。聞いてるだけでいい。反応しなくても、……そう、無視したって構わない。あたしの記憶を、一つ残らずぜんぶきみに話す」 砂虎は黙って頷いた。……きっと、自分はそのためにここに来たのだ。 風が彼女の髪をなびかせた。 目を細めて顔を上げた彼女は、遠い空を眺め、今まで封じ込めてきた尊い記憶を、懸命に探っているように見えた。 「……懐かしいなぁ……」 くすりと笑みをこぼして彼女は言った。 「あのとき、……彼も、キミと同じことを言ったんだ……」
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