第二章 彼の歌

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天は森を歩いていた。 別にたいした意味はなかった。 ただ、いつもの学校からの帰り道をいつものように進み、たまたまその帰り道の途中に大きな森の真横を通るというルートがあり、そしてたまたま今日はいつも以上に暑くて、涼しい木陰を求めてその森へ歩んでいったという、ただそれだけの話だ。 この森には、近所の人々に囁かれる、ちょっとした噂話があった。 ――この森の中には、何かが棲んでいる。 一説によると“幽霊”が棲む、また一説によると“妖怪”が棲む、またある一説によると“妖精”が棲む、などと、明らかにだんだんと現実味をなくしてきているように見えるこの噂話が、なぜここまで有名になっているかというと、「この森の中には本当に何かが棲んでいる」、という事実だけには皆が頷くからである。
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