自分のために

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そして食事が終わって雄介は自主トレをするためにジャージに着替えて玄関に出た。 その時だった。 「雄介、今から自主トレか?」 父が訪ねてくる。 「ああ。」 「俺も一緒にやるよ。」 「何でだよ。」 「いや、俺も久々に体を動かしたいと思ってな。」 「じゃあ一人でやれよ。俺は一人でしたいんだ。」 「一人よりも二人の方が練習になるだろ。それにお前がさぼらないかどうか見張る意味もある。」 「俺は自主練がしたいんだ。」 「何言ってんだよ、一人だろうが二人だろうが自主練は自主練だろ。」 チッ。 雄介は心の中で舌打ちをする。 何でわかんねーんだよ。 自主練というのは唯一誰からの干渉も受けない練習方法だ。 最近の高校や大学の練習にはこの自主練が必ずといっていいほど組み込まれている。 それは自分で考えて自主的にやる練習が一番効果があるとされているからである。 何事もやらされているということが最もよくない。 自主練に他人が絡んでくると自分のペースで練習出来なくなる。 つまり、半ば強制自主練のようになってしまうのである。 では、この強制自主練は自主練なのか? 答えはノーだ。 自主練とは大勢でやるものではなく一人でやるものなのだ。 ましてや見張りがいる自主練など論外だ。 「・・・・・・とにかく、俺は一人でやりたいんだ。」 「・・・・・ったくそこまでいうなら仕方がない。」 そういうと父はリビングへと戻っていった。 雄介がドアを開け、空を見るとそこには、既に空には無数の星が散らばっていた。 そして、雄介はゆっくりと大きく深呼吸をして隣町にあるバッティングセンターに向かって走り始めた。
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