栄光

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季節は夏。 一年で最も暑い季節。 セミの声が鳴り響く。 夏の風物詩であるセミの声を聞いていると余計に暑く感じる。 気温は35℃に達していた。 そんな中、赤坂大地は世界大会の決勝戦のマウンドに立っていた。 状況は至ってシンプルだ。7回裏。2死ランナー2、3塁。カウントは2ストライク。1対0でリードしている。つまり、1打サヨナラの場面だ。 会場には後1球コールが鳴り響いている。 キャッチャーの大島雄介がマウンドまで走ってきた。 「何だよ。キャッチャーがピッチャーにアドバイスをするような場面じゃねーだろ。」 「いやいや、俺がアドバイスをもらいたくてよ。」 「何だよそれ。」 「最後の球なんだけど、どうする?鋭く曲がる変化球で決めるか?」 「バカいえ。鋭く伸びる直球に決まってんだろ。」 「そういうと思ったぜ。打たれて泣いても知らねーぜ。」 「その可能性が無いことはお前が一番よく分かってるはずだ。」 「いうね~。まぁそれもそうだがな。」 「そういうことだ。」 「じゃあ期待してるぜ。」 そういうと雄介は元の位置に戻っていった。 大地は雄介が元の位置に戻りミットを構えたのを確認すると、大きく振りかぶった。場内には相変わらず後一球コールが響き渡っている。 「言われなくてもそのつもりだ。」 大地は心の中で呟く。 そして渾身の力を込めて白球を投げる。 相手も渾身の力を込めてバットを振る。 しかし、雄介のミットは苦もなく白球を捕らえた。 その瞬間、時間が止まった。 誰も動かない。 もはや審判のジャッジなど無意味だった。 勝敗の結末は一目瞭然だった。 そして、マウンドで大地が微笑んだ瞬間、球場が揺れた。 チームメートがよってくる。喜びを爆発させているもの。うれし涙をながしてるもの。世界一になった実感がわかなくぼーっと突っ立ってるものとチームメートの反応は様々だった。 この瞬間の為に今まで苦しい練習に耐えてきた。自分には野球しかないと思っている。 だからこそ野球で負けることは許されなかった。 そして今、自分の力が一番だと証明された。 大地はかつてない高揚感に浸っていた。
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