自分のために

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食事が始まったがしばらくの間沈黙が続いた。 テレビから聞こえてくる芸人の笑い声と隣の家から聞こえてくる笑い声だけが家の中に響きわたっていた。 この気まずい沈黙を初めに破ったのは父だった。 「雄介、お前高校どうするつもりだ?」 「うん、実は今日海王学院の監督が学校に来た。」 「海王学院?お前を誘いに来たのか?」 「ああ。俺と大地にきてほしいとよ。」 「そうか、大地と一緒か。もう決めたのか?」 「ああ。大地もそう決めたらしい。」 「そうか。じゃあこれからは高校にむけてしっかりと自主トレをしろよ。他人と同じようにやってるのではだめだ。海王学院はそんなに甘くないぞ。」 「わかってるよ。」 父はいつも雄介の野球に対して過度に干渉する。それは父の野球に対する一途な情熱が雄介にむけられている証でもあった。 しかし、それでも自分の野球を他人に干渉されるのはいい気分にはならない。 野球選手にとって一番体に悪影響を及ぼすのは他人の過度の干渉からくる束縛されているというストレスであるという。 これが選手の成長を妨げる最大の原因と言っても過言ではない。 しかし、この家にはもう一人、その一途な情熱から雄介に深く干渉してくる人間がいた。
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