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俺は、居並ぶビルの一つの前に立つと、窓を見上げた。六階の窓は真っ暗で、ブラインドも下りていなかった。俺はビルの中に入り、いつもの習慣でエレベーターは使わず階段を上がった。
ドアの鍵は開いていた。俺は細心の注意をはらい、ドアを三センチほど開けた。人の気配は、ない。だが、油断はできない。それが一流のプロであるならば、気配をさせるはずがないのだ。俺は、慎重に部屋の中へ滑りこんだ。
中からは物音一つしない。俺は、思いきって勢いよく寝室のドアを開けた。
彼は、いた。俺がドアを開けたことに気づいているはずなのだが、彼は振り向かずに窓の外を見ていた。
「なんだ、いたのか」
「灯りは、つけないでくれ」
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