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何故か分からないが、人を殺した晩は、むしょうに彼を抱きたくなる。抱く、と言うよりは犯す、と言ったほうがふさわしいかもしれない。それは、愛の行為などというやさしいものではなかった。
彼に対するこの感情を、愛と呼べるのだろうか。俺も彼も、そんな三流のメロドラマめいた言葉を口にしたことはなかったし、これからもないだろう。だが、俺が彼に魅かれていたのは事実だった。
彼の紅い髪は、血を連想させた。また、その紅こそが彼にふさわしかった。
「――綺麗な色だな」
俺は彼の髪を一ふさ手にとり、口づけた。彼は、そんな俺を見て、あきれたように言った。
「綺麗? この色がか?」
「ああ、俺はそう思うぞ」
「君は……紅は何の色か知っているか?」
「さあな」
「紅は、罪の色だよ」
彼は、こともなげに言った。楽しんでさえいたようなその彼の言葉が、いつまでも俺の耳に残った。
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