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何かあったのか、と訊きたいところだが、訊いて素直に答える奴でもないだろう。だから、俺は何も言わなかった。切り出してきたのは、彼のはうだった。
「君に、訊きたいことがある。ロジャー――いや、“ジャッカル”」
「こんなときにか?」
「ああ」
と、彼はうなずいた。
この部屋にいるときは、互いを名前で呼びあうことにしていた。ベッドの上くらいでは、仕事のことを忘れていたからだ。そのかわり、この部屋以外では二人とも相手の名前を口に出さず、彼は俺のことを“ジャッカル”と呼んだ。
だから、彼が俺の腕の中で“ジャッカル”と俺を呼んだのは、これがはじめてだった。このとき、それでも彼の問いに答える気になったのは、彼が俺に訊きたいことに興味があったからだった。
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