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(今日で一週間か……)
夕食を終えてから、二階の自室でのんびりしていた桂はふと、網戸にしていた窓の向こう――ちょうど同じ位置にある隣家の窓に視線を向けた。
八月初旬。学生は夏休みの真っ只中である。
大量に出された課題と上手く折り合いをつけながら、桂は高校生として初めての夏休みを満喫していた。
一方、幼なじみであり、窓から見える隣の家の部屋を自室としている保臣は、部活で先月から多忙な日々を送っている。
夏で“高校”“スポーツ”とくれば、誰もが思い浮かぶのが甲子園野球であろう。
保臣が所属する野球部も例に漏れず、甲子園へのキップを手に入れる為に地区予選に出場した。
彼のいる野球部は強豪として有名であり、代表候補の一つとして名があがる程である。
ただ保臣は三軍制の中でまだ二軍の身である故に、試合出場はおろか、ベンチ入りも出来ない立場であった。
実際地区予選が始まっても、試合当日の観戦は部の方針として認められず、試合日に動くのは一軍のみで、二軍・三軍は居残って練習である。
応援観戦が許されるのは地区大会決勝日からなのだが、見事保臣の高校は決勝までコマを進めた。
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