幼年期

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台与は時々、九郎を河辺に連れ出した。 「九郎様。急がば回れって言葉がありますでしょ? 私は、いつも此所で自分を見つめ直しております。 人は自然に生かされていると言う事を、忘れない為にも…」 「でも…早く父上のお役に立てる男になりなさいって…」 九郎は、戸惑いながら言った。 「九郎様。私達は、自然に生かされているのですよ? 生きる為の水も、作物も… 無くては生きては行けませぬ。 」 「九郎様が食される物は、民が作られます。 その民が納める年貢で生活をして居られます。その民を…国を守る為、九郎様は強くならねばならないのです。」 … 九郎は、神妙な面持ちで聞き入っていた。 「それに。 風ひとつ、天候ひとつで戦の流れは変わります。 自然を甘く見る者は、自然を味方に出来ぬ者は、必ず敗れます。」 九郎は、黙って台与の話を聞いていた。
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