九郎

3/3
68人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「台与(とよ)。九郎殿。 入りなさい。」 運慶の声で、私は初めて現実に引き戻された。 「はい…」 九郎と呼ばれた男の子は、もう泣いてはいなかった。 「九郎殿。 承知して居られるますな。 ここで、この台与と精進して戴く事… 台与の兄も、すぐに呼び寄せる故。」 「父上…しかし」 兄は修行中の身。 此所へは戻らない筈だった。 運慶は、私の問掛けには答えず、言った。 「台与の兄が、九郎殿を御守り致しましょう。」
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!