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「台与(とよ)。九郎殿。
入りなさい。」
運慶の声で、私は初めて現実に引き戻された。
「はい…」
九郎と呼ばれた男の子は、もう泣いてはいなかった。
「九郎殿。
承知して居られるますな。
ここで、この台与と精進して戴く事…
台与の兄も、すぐに呼び寄せる故。」
「父上…しかし」
兄は修行中の身。
此所へは戻らない筈だった。
運慶は、私の問掛けには答えず、言った。
「台与の兄が、九郎殿を御守り致しましょう。」
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