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「父上!!遅うなり申した。」
兄上が、帰ったのは七日も過ぎてからの事だった。
その間、私は九郎に会う事はなく、巫女として神事を果たしていた。
「台与…来なさい。」
運慶に呼ばれ、私は、その時、初めて九郎の立場を聞かされた。
先日、九郎を連れて来られた御方が、九郎の母である事。
九郎が大納言様の御子息であられる事。
世継ぎ継承の時まで、この社で御過ごしになられる事…
運慶は、兄上に向かい、こう言った。
「武慶。
九郎殿に剣の道を教えて差し上げなさい。」
「良いか。誰よりも強くじゃ。負ける事は許されん御方じゃ。」
運慶は、私の方に向き直り
「台与。九郎殿に作法など教えて差し上げなさい。」
「今まで以上に神事にも精進しなさい
…九郎殿と、この国の行く末を御守りしなさい。」
台与は、深々と頭を下げた。
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