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「あはは、先生おかしっ…ププ、」
図書室だからか笑いを堪える生徒に、榊は小さく小さく首を傾げた。
気付けばケラケラと笑い通していた相手はす、と顔から笑みを消し目尻を擦りながら話し掛けてくる。
「あは、は、はー、‥手伝いましょうか?」
「…いや、課題内容が一人旅をしてしまってはいけない。叶戸にも教えはしないが‥歌う練習をしておいて後悔はしないはずだ、とだけは言っておこう」
「ちぇ、こういう情報は持ってて損はないと思ったのに」
「損でなくて得ばかりだろう?」
珍しく生徒との会話が弾んで楽しげな榊。
ああ、この子はなんて可愛らしいんだろう。いつも宍戸についてまわる鳳にどこか似た可愛らしさがあるな。いやらしいことが似合わない屈託のなさがどうにも‥
なんて思っているのには、本人すら気付いていない。
普段の二人はそこまで親しいわけでもなく、榊のほうは「毎回満点なのに情報を得るためにワザと追試を受けにくる」ことがある叶戸を、超常現象でも見るように首を傾げていた程だ。
それが今は二人きりで笑顔で話をしている。
不思議な気持ちだ。
今まではそこまで生徒と親しくはしなかったからだろうな‥
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