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「…そういえば今日はあの人の命日か。アリス、まだ引きずってるんだね…」
誰もいない夕暮れの教室に葉月の声が静かに消えた―…‥
オレンジ色に染まる墓地。
不釣り合いな少女が一人、墓の前に立っていた。
「知さん、今日でもう一年になるんだね…。やっぱり私は解らないよ、貴方が自殺した理由…」
思い出すのはいつも貴方が自殺したのが私の性だと罵られたあの時…。
「やっぱり私の性なのかな…」
本当はこうして手を合わせる事も許されてはいない。
「…ここには来ないでほしいと言ったハズですが?」
静かな声の方向を向くと、冷たい水が身体を濡らした。
冬の夕暮れにはひどく遅い水浴びだと、呑気に思ってしまった。
「疫病神ッッ知を返してっ!!返してよ…」
泣き崩れる女性と、泣く女性をなだめる初老の女性…。
憎しみを隠し、アリスの正面に立つ姿を、彼女が正視するには辛過ぎる…。
有栖は何も言わず、二人から逃げ出した…。
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