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アリスは自然と高台にある公園へと向かった。
錆びれたブランコ、滑り台、シーソー…。
いつものようにブランコに座り、夕陽が沈む街をただ眺めていた。
濡れた制服は体温を奪っていくが、そんなことを気にする気にもなれない…。
「『疫病神』か…」
頭から離れない悲痛な叫び声…。
否定出来ない自分がおかしかった。
自分が誰を幸せにしたことがあるのかさえ、疑ってしまう…。
「何が疫病神なんですか?」
振り向くと横のブランコに、いつの間にか和服を着た男性が座っていた。
見知らぬ不審男性はこちらを向き、ニカッと笑うと、また夜に飲み込まれ始めた空を眺めていた。
答えを特別求められているようでもないため、アリスはその問いに答えなかった。
「名前を聞きしても構いませんか?」
本当に変な男性だと思った。
不思議と嫌悪感も不安感も無かった。
「……アリス、藤宮有栖」
男性はアリスの名前を聞くと更に頬を緩めた。
「アリス、可愛い名前だですね。どう書くんですか?」
アリスは地面に指で『有栖』と書く。
不思議の国のアリスのように軽薄な自分…。
そして同じ様に迷子になっている。
アリスは不思議の国を、有栖はこの混沌とした世界を―…‥
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