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「宜しくアリスさん。私は立花龍之介と言います。立つ花に、芥川龍之介さんの龍之介と書きます」   アリスは何も話しはしない。 龍之介もそれを理解し、敢えて返事や反応を待たない。   「それと不用意に見ず知らずの人間に本名を教えるものではありませんよ?」   「…」   そんな事は解っていた。 自分でもそう思ったのだから…。 アリスは自分が何故、男に名前を明かしたのか解らなかった。 この龍之介という男は相手の警戒心を油断させる。 食えない男だとふっと思った。 アリスはそのまま立ち上がり、公園の出口へと向かう。   龍之介はそれを静かに見送る。 何も言って来ない龍之介を少し不思議に思った。 大体の人間は何か言ってくるものだから…。好感を持った。   「明日もここで御待ちしております。気が向いたらおいで下さい」   そう言う声に振り返ることもせず、そのまま帰宅した。 近付いては突き放し、そしてまた近付く…。 きっと無意識なのだろうとアリスが顔を歪めた。 自分に似ていたから…。 だけど龍之介が自分と同じ過ちをしていないとハッキリ解る。 龍之介には『コトバ』があるから…
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