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「その名前、女の名前じゃん。何で俺に聞くわけ?」
遠堂は間を置かずにそう問い返した。
「お前が…似てるから‥」
だからどうしても聞かずにいられなかった。
確かめたかった。
もう何百年も探し続けているから─‥
それからしばらく間が空いた。
沈黙が痛い。
でもその空気を破ったのは遠堂の嘲笑うような声だった。
「ふっ…馬鹿じゃねぇの?似てるからって何だよ、アホらしい」
「っ─‥」
「俺は“ジュリエット”じゃない」
遠堂はきっぱりと言い放った。
その瞬間、俺は悔しさと後悔で心が押し潰されそうになった。彼女を間違えたんだという気持ちに…
「つうかそれ、外国人の名前じゃん。俺は日本人だし女でもない」
「そーだな」
「ジュリエット、ねぇ…。じゃああれか、お前はロミオか」
「そうだ」
即答して真っ直ぐに見据えると、遠堂は少し怯んだ。
そう、俺はロミオだ。
ジュリエットを探すために行きてる。彼女は女性だ。何で俺は彼女そっくりのこいつに確認をしたんだ。
似た者がいてもおかしくない。
…馬鹿だな、俺は‥
今も昔も─‥
「…尾行して悪かったな」
「‥別に」
じゃあ…と短く挨拶して俺は下へ降りた。三原と冴木が待ってるだろうから。
「─‥ばぁか‥」
遠堂の洩らした小さなその声は俺には届かなかった。
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