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カイトは〝気〟で剣を具現化し、握る。
「鳴海。悪いけど、負けねぇぞっと!」
剣を握っていないほうの手で〝気〟の球を作りあげ、鳴海へと放つ。
「効かないよ♪」
「っ!」
鳴海のいうとおりであった。
カイトが放った〝気〟の球は、動物の『未』の姿をした鳴海に当たったが、ダメージを与えるどころか逆に吸収されている。
「行っくよ~カイト♪十二支拳法、未の型・羊丸(ようがん)!」
鳴海は顔と両手両足までも羊毛の中にいれ、カイトの目の前には丸っこい羊毛がいた。大きさはカイトの二倍ほど。
「はぁぁ!」
カイトは跳び、それに斬りかかる。
「なっ!?」
やはり剣は羊毛に吸い込まれた。
「ちっ」
舌打ちし、カイトは剣を消して鳴海から離れた。否、離れようとした。
「なんだ!?」
羊毛の中から伸びてきた腕のような羊毛に包まれる。
「未の型・包羊(ほうよう)」
そしてカイトは気付いてしまった。鳴海のやろうとしていることが。
「死なないでね、カイト♪」
鳴海はそのまま塔の内部を転がりだした。階段も構わずに上っていく。もちろんカイトを包んだまま。
ヒューズは『午の塔』に到着した。
「ん?なんやレヴィル。……さっきの兄ちゃんはいないみたいやけど」
ヒューズは自らの剣・翔竜剣を構える。
「当然だ。お前は私が殺す。妹の仇をとるのは、私だからな!」
言うとヒューズはニレナへと駆け、対するニレナも走馬刀を出し、ヒューズに駆ける。
カンカン、カンカン――
剣と刀とがぶつかり合う。
「はぁぁ!」
ヒューズが叫ぶ。
カン――
「とりゃぁ!」
ニレナが叫ぶ。
カン――
「……きりがない」
お互いに距離をとり、ヒューズがそう呟いた。
「そやな。なあレヴィル、竜を出しぃや」
「なに?」
ヒューズは顔をしかめる。
こいつ、どういうつもりだ?と。
「わいの馬とレヴィルの竜で戦わすんや。どや?」
ヒューズの返事も待たず、ニレナの体が変化していく。
「獣人・午(うま)や」
ヒューズは微笑し、
「いいだろう」と言った。
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