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「ん……?」
ヒューズは身を起こす。
(どうやらまだ生きているようだな……)
思い、刺された左胸に手をやる。
「む?」
何かが懐に入っていた。
――それは一冊の本。
「ふむ。これは冬美ちゃんのだな……」
今度謝っておくかなどと考え、いまだぶつかり合っている竜と馬に近づく。
「はぁぁ!」
覇気(はき)という名の気を放ち、竜を剣に戻し、相手の馬を消す。
「ふむ」
翔竜剣を握る。
「ニレナ。勝負あったようだな」
先程ニレナを吹き飛ばしたときにそのニレナが壁に衝突し、その壁が崩れ、外が見えている。
「まだや」
ニレナは立ち上がり、人型に戻る。
「レヴィル。わいの最初で最後の技、くらいぃ」
「……いいだろう」
ヒューズが頷くと、ニレナは壁にあいた穴から跳んで行った。
「なに!?」
ヒューズは穴から上空を睨む。
そこには当然ニレナがいて、ヒューズを見下ろしていた。
「獣人・天馬(てんま)!」
「!?」
ニレナは上空で、翼がはえた馬へと変身した。
「何をする気だ!」
ヒューズは叫ぶ。
「逃げたほうがえぇで。十二支剣法、午の型・天馬刀・斬(てんまとう・ざん)!」
気付くとニレナは巨大な刀を握っており、ヒューズに――というよりは塔に向かって振り下ろしてきた。
塔の上層部が崩れていくのがわかる。
「く……!」
ヒューズは剣を鞘に収め、手を頭上へ上げると、そこに〝気〟を集中させる。防御の体制である。
中層部が崩れてくる。
「てやぁぁ……!」
ニレナの叫びが聞こえ、ヒューズも負けじと叫ぶ。
「うおぉぉ……!」
ニレナが振った巨大な刀がヒューズの〝気〟に触れる。
(気を抜けば、文字通り、死ぬ……!)
思い、ヒューズは〝気〟を強める。
「ここで負けては、冬美ちゃんを助けられん!!」
「このロリコンがぁぁぁ!!」
刹那、ニレナの力が弱まるのを感じた。
「うぅ……あと……」
少し耐えれば、ニレナの〝気〟が尽きるはずだ。
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