第七話~五人の戦い(前編)~

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「ああ、俺もだ!あのときのことは忘れちゃいない!」 力也は秋葉を連れ去っただけではない。 秋葉とキスをしていた。なぜか無性に腹がたった。 「十二支拳法、戌の型・腕孔(わんこう)!」 力也が二本の腕でカイトの腹部を狙い、カイトはそれを〝気〟で防ぐが、軽く吹っ飛ばされてしまった。 「ふぅ、それだけか!ポチ!」 カイトは〝気〟で剣を作り、力也へと駆ける。 「少しはやるようだな!ならば、戌の型・緑(みどり)!」 すると力也から〝気〟が回転してカイトのほうに飛んできた。 「なっ!く……!」 カイトは剣で防ぐが、力也の〝気〟のほうが強かったらしく、横に回転しながら吹っ飛ばされてしまった。 力也はそれを追い、カイトが壁に衝突する前に首を掴み、壁に押し付ける。 「ぐがっ!」 カイトの口から血が垂れる。 「名乗るのを忘れたな。俺は薬師丸力也。てめぇの名前も聞いてやるよ」 「俺……は……」 カイトは右手に〝気〟を集中させる。 「さ……もんじ……か……」 力也はそれに気付き離れようとするが、 「カイトだぁぁ!」 カイトのほうが早かった。 〝気〟を集中させた右手で力也の顔面を殴り飛ばしたのだ。 「んはぁ、はぁ……」 いくら治癒能力がある服を着ていても、痛いものは痛い。 力也が壁に衝突し、壁が崩れる。 「まだ立てるだろ、ポチ。……いや、力也」 カイトは〝気〟で作った剣を消し、新たに槍を作る。 「ぐ……」 力也は瓦礫(がれき)の中から立ち上がり、カイトを睨んだ。 「てめぇを殺す理由ができた。秋葉との仲を邪魔したこと、雫のこと。だが、俺の顔を傷つけたことが一番許せねぇからな!」 すると力也の体が少しずつ変形していく。 「死ねや、カイト。獣人・戌(いぬ)」 「伸雷(しんらい)!」 「エア・クッション!」 チロルが細長い雷を放ち、蓮がそれを風の防御壁で防ぐ。 「レン。鬼を使うといいネ」 「ちょうしにのるな!エア・ハンマー!」 蓮は風の塊をチロルにぶつける。 チロルは避けず、直撃した。 「チロル。手は抜くな。俺たちは敵同士だろ」 「手なんて抜いてないネ。ただ敵の力を知りたかっただけネ。ミーとどっちが上なのかをネ」 「なに?」 チロルは体に雷を纏わせる。 蓮もそれに倣って体に風を纏わせる。
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