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「そう言えば、蛍見川は冬真が俺に教えてくれたんだよな」
蛍見川からの帰り道、蛍見川で捕まえた一匹の蛍を手に 陽太は言った。
確か陽太と友達になった時、俺が友情の証として場所を教えたんだっけ。
都会から越して来た陽太の事だから、テレビぐらいでしか蛍を見た事がないだろうと思い 連れて来たんだ。
そしたら案の定そうで、陽太はすごく喜んでくれた。あの時の笑顔は 今でも忘れない。
「それからだよな、陽太が蛍好きになったの。夏になる度に夜駆り出されてさ。
その度に俺母さんに叱られてたし…」
「でも、おまえだって蛍見川好きだったろ?親に内緒で酒飲んだりさ」
ニコニコ笑いながら思い出に浸る陽太。
この笑顔とも当分はお別れか…
「長い休みには陽太もこっちに戻ってくるよな?」
「うん?さぁ…?」
「さぁって。おまえの務める会社、休み少ないのかよ?」
「どうだろうな…」
「意味分かんね。また二人で蛍見川来てぇのに…」
「…うん」
別れ道、陽太の足が止まる。真っ直ぐ行けば三分もかからない所に陽太の家があるが、進もうとしない。
何だか変だ…。
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