0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「死ぬって…」
「俺の心臓、ヤバいんだ」
俺の心臓だってヤバい。
陽太が死ぬなんて 絶対 ウソだ
「心臓の機能が徐々に落ちてるって。いつ止まってもおかしくないらしい。
1ヶ月前家で倒れて、それで判明した」
「病院は…?都会の方の病院行けば治るんじゃないのか!?」
「治んねぇよ。それに家にそんな金ないしな。入院してればある程度は長く生きれるかもしれないけど……俺はヤだね。闘病生活なんてしたくないし。どうせ先が長くないなら、最後まで好きな事 してたいよ」
陽太は重なった俺たちの手を ただ見つめている。
俺たちの手の中で 蛍はせわしなく動く。
「…陽太。死ぬとか、ウソだよ、な…?」
「ウソついてどうするよ」
「だって、簡単に死ぬとか…!!」
今、俺の手のひらの上にある陽太の手は 温かい…
確かに生きている証。もうじき冷たくなってしまうなんて
俺には考えられない。
ふと 俺の頬を温かいものがつたう。何年振りだろうか、涙を流したのは―。
「…冬真、気にするな、よくある事だ」
暗い夜道に 陽太の眩しい笑顔が灯る。
.
最初のコメントを投稿しよう!