蛍の君へ

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「"よくある事だ"って お前…」 片手で涙を拭う。 「冬真、お前もいつかは死ぬ。命あるものに死はつきものだ。ただそれが早いか、遅いかだけのこと。…簡単だよ、分かり切った事だろう」 「確かにそうだけどさっ!!だからって簡単に生きるの諦めんのかよ!?」 「…冬真、俺は 蛍になりたいんだ」 陽太がチョンと蛍を指でつつくと 蛍は美しく光り出した。 柔らかな光がそっと 俺たちの顔に射す。 「たとえ命が短くとも、思う存分、命のある限り家族の傍で、冬真の傍で…俺は 笑顔で光っていたい」 優しく微笑み、俺を見つめる瞳には うっすらと涙が浮かんでいた。 ―そうか『蛍になりたい』と言うのはそういう意味だったのか そして陽太は決めたんだ。 生きるのを諦めたんじゃなく、蛍になることを      決めたんだ―… .
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