7人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、水谷さん。それは俺の衣装かな」
他の団員とは見るからに異なる、手の込んだ細かな竜の刺繍を目にして、団長が声をかけた。
「そう。要、着てみて」
要と呼ばれた男子生徒は、言われた通りに袖を通す。
「和也って、スポーツ万能のくせに、水泳だけはからきしなの」
要が衣装の着心地を確かめている間に、他の男子生徒が茜の問いに答える。
「25メートル泳げないもんな」
そしてそれを和也が、ふてくされたように肯定した。
「へえ、意外」
茜の丸い瞳が、大きさを増した。
「どうしてなのかな」
2つに分けて両耳の脇でまとめられた茜の髪が、首を傾げた彼女の動作に伴って、わずかに揺れた。
「子供の頃に溺れたんだとさ」
試着を終えた要が、衣装を茜の手へ戻し、特に問題はないと告げた。
最初のコメントを投稿しよう!