絵里香

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恋なんて、しない方が楽だ。 「聞いてよー。なんか彼氏がね、明日のデート駄目かもとか言ってるのー。」 すっかりぬるくなったパックの紅茶を飲んでいたら、友人の絵里香がド派手な携帯を片手に前の席に座った。 「でも来週埋め合わせしてくれるんだって!これって有りかなぁ?」 「…有りじゃない?」 絵里香がこの手のネタで私に同意を求めることは少なくない。 だから簡単に答えが見つかってしまう。 「莉子もさぁ、恋のひとつやふたつしなよー。絵里香ね、心配してんの!」 絵里香はそう言いつつメールを打つ。 …心配ねぇ…。 「大袈裟だって。」 「そーお?」 「そんな重要なことじゃないじゃん?」 「絵里香には重要なことだよ?」 「はいはい。」 絵里香はいかにも現代っ子で、茶髪で巻髪、濃いめの化粧をしていて可愛いモノと恋には目がない。 「まークンはね、絵里香のオアシスだもん!」 「はぃはぃ。」 一ヶ月前はゆークンだったぞ…。 私の通う高校は県内でも有名な進学校で、流行や恋に疎い人が大勢いる。 私は決してダサい方ではないが、絵里香に比べたら相当真面目だと思う。 溺れる恋はしない方が身のため。 過去2回の恋で私はそれを学んでいた。 絵里香は馬鹿そうに見えるが、相当頭がいい。 彼女はいつも頭で考えて行動するタイプで、案外冷静なのだ。 私はその真逆みたいな人間なのだ。
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