蒼い月

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この感じは・・・? 3つ隣の病室に扉も開けずに 入っていくのが見えた。 ・・・死神だ。 病室を出てくると、 廊下を少し彷徨いふっと消えた。 ちらっとしか見えなかったが、 この前の死神だろう。 いきなり、看護婦が病室から 飛び出してくる! 慌てて医師を連れた 看護婦が帰ってくる・・・。 また誰かが死んだみたいだ。 いつもの虚しさを感じる。 でも、それが間違いなく、 日常的なことは誰だって 知っているんじゃないかな。 ・・・死は誰にでも、訪れる平等の存在。 ・・・死神は 人々に平等に死を与える存在。 でも、僕はもう・・・。 次の日、町をぶらついても、 死のオーラを纏った人も、 死の匂いも感じる事は無かった。 だんだん、死を感知する能力が 落ちてきているみたいだ。 この力が無くなれば、 僕の存在する理由は・・・? 行く当てもない僕は、 また公園のベンチに一人座っている。 ベビーカーを押した 若い母親の姿が見える。 特に何も感じない。 何事も無く過ぎていく時間・・・。 夕暮れ時に、また病院にやって来た。 病室の中に入ると、園子さんは 気がついて体を起こそうとするが。 「あ、そのままにしていて下さい。」 僕は、起きるのを止めた。 明らかに顔色が悪い・・・。 少しではあるが・・・死の匂いがする。 「・・・これを受け取って      もらえませんか?」 園子さんが茶色の 大きな封筒を僕に渡す。 封を開けてみると、 スケッチブックが入っていた。 「これは、夏美ちゃんの・・・。」 「最後のページを  見てやってくれませんか?」 僕が、ページを開くと 最後のページには・・・ ・・・いつもの公園の絵だった。
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