蒼い月

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真っ赤なお日様に、緑の茂る木々。 そして、いつものベンチ。 笑顔で園子さんと 手を繋いでる夏美ちゃんの絵。 その隣には、 青い着物姿の僕の絵があった。 僕も楽しそうに笑っていた・・・。 「・・・良いんですか?  こんな大切なものを?」 「夏美ちゃんの  形見じゃないですか・・・」 「もう、良いんですよ」 「だからこそ天河さんに  持っていて欲しいんです。」 「夏美の事を忘れないで  いてやってください。」 そして、面会の時間は終わりを告げる。 部屋の外に出ようとすると、 何者の気配も無く、 ・・・空間が灰色に染まってゆく。 ・・・死神の結界が張られた! 僕は、姿の見えない相手に言い放つ。 「ここの病室の人間に  手を出すことは僕が許さない!!」 黒い死神が、僕の前にスーッと姿を現す。 「何故だ?何故邪魔をする?」 「もう人が死ぬのを  見るのはたくさんだ!」 「殺すのも嫌だし  殺されるのも見たくない!」 そう言って僕は虚空から 鎌を取り出した! 「お主が殺さぬなら、私がやる」 「いや、それも許さない!」 一瞬、黒の死神が溜め息を ついたように見えた。 「そういうと思ったが・・・」 「お主、知っているだろうな?」 「狩りの邪魔をするなら  どうゆう事になるか?」 黒の死神も、鎌を空から取り出す。 「望むところだ!」 二人の死神の姿がぼやけたかと思うと、 姿が消えていた。 日も落ちて、 薄暗く月の明かり程度の光しか 差し込まない病院の屋上で、 刃物同士が擦れ合う金属音が響く。 キィーン!カキーン!! 姿を現した蒼の死神の 後ろから鎌を横殴りに振る黒の死神。 鎌が届く前に、 姿が掻き消されて黒の死神の背後に回る! 肩口をかすめる鎌! 逆に袖の辺りを切り刻む! 「解かっているとは思うが、  お主ができることは私も出来るぞ。」 「それは、僕にも同じ事さ!」 鎌を横殴りに振る。 「何故、そんなに剥きになっている?」 「殺したくない理由が出来ただけだ!」 ギリギリで交わしたが、背中を斬られた。 ・・・こうなったら  いちかばちかだ・・・。 少し、距離を開けて鎌を振り上げる。 「そこから、届くわけが無かろう」 黒の死神も鎌を振り上げる。 先に姿を消し、黒の死神の真正面に出る。
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