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<第二幕>
この日本において、
商業の都市と呼ばれる地域の
最南端に位置する街。
その名は不破町。
この街の中心に位置する
メインストリートには、
大きな高層ビルが立ち並び、
高速道路が近くを通る。
そんな、大都市も
少し路地に入れば、
光と闇の共存する世界。
夜の商売、ヤクザ、違法な高利貸、
いろいろな人間も存在するが・・・。
もう一つ別の闇に入れば、
この世とは、
かけ離れた世界も存在する。
ここはネオンの光が
届かぬ路地ではなく、
駅前の下町情緒の溢れる
小さな商店街。
しかし、ひとたび夜になれば、
人知れず魔物が彷徨する
危険極まりない場所でもあった。
この世のものでは無い者達の行列、
昔の言い方で言うならば、
百鬼夜行。
そういった伝説も継承されている。
カランコロンカラン♪
喫茶<未来>の扉が
音を立てて開く。
扉から4人掛けの
テーブル席が二つ、あとは
カウンター席の小さな店内が見える。
豆の良い香りと
エアコンの涼しい風が
汗ばんだ額に当たって
気持ちが良い。
「こんちは~!配達ですっ!」
やや長めの黒髪を帽子で
押さえた青年が、
いつもの花の配達にやってきた。
青い着物に
紺色のエプロンを掛けている。
すごい変な格好なのだが・・・。
身長はそんなに高くなく、
笑うと目が無くなるぐらいに細い。
愛嬌のある顔なのだろうが、
普段からいつもこの顔である。
「あら、いらっしゃい!蒼ちゃん。」
「コーヒーでも、飲んでいく?」
そう、声を掛けてきたのは、
喫茶<未来>のマスター。
片桐 夜子だ。
少しだけ癖のある長い金髪に、
ちょっと濃い目の色の入った眼鏡。
透き通るような白い肌。
鼻筋が通ったカリスマモデルを
思わせるような顔立ち。
眼鏡の奥の瞳は
見る者全てを魅了するであろう。
薄暗い店内のカウンターの
向こうで開いた扉を
眩しそうに見ている。
歳のほうは、
20代後半に見えるが?
実際のところは
僕にもわからない。
この人には、
色々と世話になっている。
そう、色々な意味でね・・・。
「・・・あ、いえ。」
「店長に怒られます。」
それでなくとも、
あの人は遅く帰ると
機嫌悪いんだから・・・。
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