蒼い月

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・・・いつのまにか、 公園のベンチに座っていたんだ。 深い蒼色の着物を着た青年は、 大きな鎌を手に持ち、 考え込むように腰掛けている。 夕立のような雨が降った後だが 真上に大きな木があってベンチは、 あまり濡れてはいなかった。 今月のノルマも まだ達成していないんだけど、 なんだかやる気が起きなくて・・・。 いや、 ノルマなんて在って無い様な物だ。 別に達成しても誰が褒めるわけでも無く。 達成しまいが罰は無い。 獲物が居れば狩らなくてはいけない? いや、 狩らなくてはいけないとも感じない。 愛用の首狩り鎌を 雑巾を絞る仕草でクルクル回している。 何故、やる気が湧かないんだろう? 死神っていうのは感情を 持っちゃいけないんだって。 寿命の尽きる人を探して、 肉体と魂を切り離す。 これが僕の仕事だよ。 長年、担当だった死神が 具合が悪くなったって事で、 僕の担当になったんだけど・・・。 はっきり言って 良く解らない事ばかりだ。 えっと、なんだっけ? 出身地とか書いている書類? 戸籍? 人間は自分を証明するのにどうして こんなものを使うか良く解らないけど、 とにかく、ここで暮らすには 必要なものらしい。
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